
J-REITへの投資検討には、財務諸表の理解が欠かせません。中でも基本中の基本となる、「貸借対照表」と「損益計算書」についてご説明します。
貸借対照表はバランスシート(B/S)とも呼ばれ、期末時点における企業の財務状態を示すものです。実際にNBFの第12期(平成19年6月期)末の貸借対照表を例に見てみましょう。
| 科目 | 金額 | 比率 | |
|---|---|---|---|
| 資産の部 | |||
| 流動資産 (現金、預金など) |
32,441 | 4.8% | |
| 固定資産 ・有形固定資産 (不動産、信託不動産など) ・無形固定資産 (借地権など) ・投資その他の資産 |
647,657 | 95.2% | |
| 繰延資産 | 167 | 0.0% | |
| 資産の部合計 | 680,266 | 100.0% | |
※金額は百万円未満切り捨て
※項目は簡略化されています
| 科目 | 金額 | 比率 | |
|---|---|---|---|
| 負債の部 | |||
| 流動負債 (短期借入金など) |
77,187 | 11.4% | |
| 固定負債 (長期借入金など) |
246,568 | 36.2% | |
| 負債の部合計 | 323,756 | 47.6% | |
| 純資産の部 | |||
| 投資主資本・ 出資総額 (投資主からの出資) ・剰余金 (当期未処分利益) |
356,509 | 52.4% | |
| 純資産の部合計 | 356,509 | 52.4% | |
| 負債の部及び 純資産の部合計 |
680,266 | 100.0% | |
貸借対照表は大きく分けると、左側の「借方」、右側の「貸方」から構成されています。「借方」は調達した資金をどのような資産に投じたかを示す「資産の部(1)」となります。 当然ながら、J-REITの場合は不動産が含まれる「固定資産(2)(特に有形固定資産)」が大半を占めます。
一方、資産に投じたすべての資金が、そもそもどのように調達されたかを表すのが右側の「貸方」です。よって貸借対照表では、常に借方の合計(3)と、貸方の合計(6)が同じ金額になります。
貸方は「負債の部(4)」と「純資産の部(5)」に区別されます。「負債」は他人資本とも呼ばれ、金融機関からの借入金などで調達した資金です。反対に「純資産」は市場を通じて投資主から直接集めた資金であり、自己資本とも呼ばれます。総資産に占める借入金などの割合はLTV(Loan To Value ローン・トゥー・バリュー)と呼ばれ、J-REITの安全性を示す一つの指標になっています。
損益計算書は、ある決算期間の損益状況を示しています。貸借対照表がある時点での資産および負債の一覧だとすると、損益計算書はその増減のプロセスを示すものだと言えるでしょう。
こちらもNBFの第12期(平成19年1月1日~平成19年6月30日)の損益計算書を参照しながら、その詳細から分配金算出の流れまで見ていきます。
| 科目 | 金額 | 比率 | |
|---|---|---|---|
| 賃貸事業収入等 ・賃貸事業収入(家賃、共益費など) ・その他賃貸事業収入(駐車場使用料、施設使用料など) |
26,640 | 100.0% | |
| 賃貸事業費用 (オフィスマネジメントフィー、建物管理委託費、水道光熱費、公租公課、減価償却費など) |
13,323 | 50.0% | |
| 資産運用報酬 | 977 | 3.7% | |
| 販売費及び一般管理費 | 228 | 0.9% | |
| 営業利益 | 12,111 | 45.5% | |
| 営業外損益 | ▲2,048 | ▲7.7% | |
| 経常利益 | 10,063 | 37.8% | |
| 法人税等 | 0 | 0.0% | |
| 当期純利益 | 10,062 | 37.8% |
※金額は百万円未満切り捨て
※項目は簡略化されています
「賃貸事業収入等(1)」は、いわゆる営業収益のことです。大半は月々の賃料収入ですが、不動産の売却があった場合には、その収益もプラスされます。
この賃貸事業収入等から、さまざまな費用を差し引いていきます。まず、オフィスマネジメントフィー、管理委託費、公租公課を含む「賃貸事業費用(2)」、さらに「資産運用報酬(アセットマネジメントフィー)(3)」、その他経費などを引いた金額が「営業利益(4)」となります。
さらに、借入金の利息などの「営業外損益(5)(マイナス)」を差し引いた額が「経常利益(6)」です。通常の株式会社ではここから法人税などが課税されますが、J-REITは利益の90%以上を投資主に分配すれば実質上そのほとんどは課税されません。そのため「法人税等(7)」は「0百万円」になっています。
最終的に、この期の「当期純利益(8)」は100億6200万円となっています。これがそのまま分配金となり、発行済投資口数で割った19,809円が、1口当たりの分配金になるのです。
貸借対照表の説明で、LTVがJ-REITの安全性を示す指標の一つと述べました。LTVは、リスクや分配金にも影響する指標であるため、もう少し詳しくご説明しましょう。
J-REITは不動産を購入するための資金を、投資口の発行と借入金・投資法人債の発行によって調達します。J-REITのある時点での総資産に占める借入金等(NBFの場合には有利子負債残高+運用敷金相当額)の割合はLTVと呼ばれ、次のような式で表すことができます。
LTV=借入金等/総資産
つまり借入金等の割合が大きいほど、LTVの値も高くなります。ここで注意したいのが、一般的にはLTVが高いと分配金が高くなる傾向があるということです。例えば総資産100円が10円の利益をもたらすと仮定します。自己資本を100円だけ持っている場合、そのまま100円の総資産に投資をすると10円の利益が得られます。一方100円の自己資本に加えて400円の借入金(100円に対する利息は6%とします)を導入すると総資産は500円となります。500円の総資産からは50円の利益が得られ、400円の借入金に対する利払は24円なので、利益は26円となります。いわゆる借入金をテコにしたレバレッジ効果であり、同じ自己資本100円でも利益は増えることとなります。
しかしハイリターンにはハイリスクも付いて回ります。上記は低金利時の傾向であって、ひとたび金利が上昇すると、今度は借入金の利息によって赤字(=分配金ゼロ)になる危険性もあります。そのため多くのJ-REITでは、通常時のLTVを40~50%程度、物件購入前の一時的な借入金増大時でも60%以下の水準に抑えているようです。
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